本論文では、直属の部下が上司の上司(スキップレベルの上司)と直接関係を築くことに対して、管理職が抱く不安や嫉妬について考察し、それを克服するための戦略を示している。
スキップレベルの関係は適切に活用すれば、部下の成長だけでなく直属の上司の評価向上にもつながる。管理職は嫉妬や不安にとらわれるのではなく、部下の成功を支援することで組織全体の発展に貢献すべきである。そのためには、意図的かつ戦略的なアプローチでスキップレベルの関係を管理し、上司・部下・組織全体にとって最適な形を作ることが求められる。
背景と課題
銀行の上級管理職であるデイビッドは、直属の部下であるレイが自身を飛び越えて上司の上司(リサ)と直接関わることに不安を感じていた。レイはハイパフォーマーであり、リサからの評価が高かったが、その関係がデイビッドの役割を脅かしているように思えた。
デイビッドの不安は以下のようなものだった:
- レイが自分の地位を奪うのではないか
- レイが他部署に引き抜かれるのではないか
- 自分の存在価値が低下するのではないか
- リサが自分を通さずレイに直接指示を出すことで、組織の統制が取れなくなるのではないか
スキップレベルの関係の重要性
しかし、スキップレベルの関係は組織全体の成長にとって重要な要素であり、適切に管理すれば以下のようなメリットをもたらす:
- 優秀な人材の成長を促進し、組織の成果向上につながる
- 直属の上司も優れた人材を育成する能力が評価される
- 部下にとって視野が広がり、組織全体のビジョンに貢献しやすくなる
- 組織内でのキャリアパスの可能性を広げ、リテンション(離職防止)につながる
不安を克服し、ハイパフォーマーを支援するための4つの戦略
- 不安を特定する
- まず、自身が感じる脅威を明確にする。デイビッドの例では、レイの活躍が自身の立場を脅かすのではないかという懸念があった。
- しかし、レイの成功はチーム全体の評価向上にもつながると理解することで不安を軽減できる。
- スキップレベルの関係の目的を明確にする
- 部下にはスキップレベルの上司と接することの意義を説明し、過度な不安を抱かせないようにする。
- それによって、部下が新しいチャンスと成長の機会として捉えられるようになる。
- 上司との透明性を保つ
- 直属の上司が、部下のスキップレベルの上司との関わりについて事前に認識し、影響を適切に管理することが重要。
- 部下の仕事量が過剰にならないように調整し、スキップレベルの上司から直接仕事が振られることを防ぐ。
- スキップレベルミーティングの目的を明確にする
- 上司と事前に協議し、ミーティングの目的や期待される成果を共有することで混乱を防ぐ。
- 例えば、部門横断的なプロジェクトへの参画、キャリア目標の共有、組織課題の議論などを目的にする。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“How to Build a Relationship Between Your Employee and Your Boss,” HBR.org, January 27, 2025.