感謝は、職場のエンゲージメントや生産性、満足度、定着率向上など、多くのメリットをもたらすことで知られている。しかし、「感謝のしすぎ」は、かえって自己主張の欠如やキャリアの停滞につながるという“落とし穴”も存在する。この論文では、感謝の習慣が逆効果になる3つの典型的な落とし穴とその回避策について解説している。
感謝の姿勢は確かに重要だが、それが過剰になり、自分の希望や限界、正当な不満を表現できなくなると本来の成長機会や自己実現を失ってしまう。「感謝しながら声を上げる」、このバランスが健全なキャリア形成とウェルビーイングの鍵になる。
感謝過多の3つの落とし穴と対処法
① 現状に満足しすぎてしまう
- 問題点:「これだけでもありがたい」と感じて、本来望んでいたチャンスや役割を求めることをあきらめてしまう。
- 対処法:
- 感謝と野心は両立する。
- 「私は~したい」と主体的に希望を伝える (アイ・ステートメント) で前向きに主張する。
- 例:「私はリーダーシップを取る準備ができています」
② 批判的な会話を避けるようになる
- 問題点:
- 「与えられた機会に感謝すべき」という思いから、正当な不満(偏見、バーンアウト、制度上の不公平)を言い出せなくなる。
- 対処法:
- 感謝の対象を「与えられた機会」ではなく「自分の努力によって得た成果」と再定義する。
- 攻撃的にならず、会社の価値観と整合する形で提案や懸念を表明する。
- データを用いて懸念を伝えることで、建設的な対応を促す。
③ ネガティブな感情を抑え込む
- 問題点:
- 「いつもポジティブでいなければ」と感じて、怒りや疲労といった感情を抑圧してしまう。
- これは「トキシック・ポジティビティ(有害な前向きさ)」と呼ばれる現象で、心理的なゆがみを生む。
- 対処法:
- 自分の本音や感情を無視せず、健全に認識・表現する。
- 感謝の気持ちとともに、不快感や限界も同時に伝えることで、長期的な持続可能性を確保する。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“When Gratitude Leads You to Accept Less Than You Deserve,” HBR.org, February 19, 2025.