リーダーの能力評価は、ビジネスにおける複雑性と不確実性の中で単純な結果主義では適切に行えない。チェスの例を引き合いに出し、同じ一手でも文脈によって「天才的」とも「愚か」とも解釈されるように、リーダーの意思決定も背景や前提条件によって評価が大きく変わることを示している。
経営者の能力を評価する際には、チェスのような一見明快なゲームですら文脈が評価を左右することを念頭に置き、ビジネスという不確実性に満ちた世界では尚更、単純な結果主義や短期視点で判断してはならない。それぞれのプレイヤーが「どのゲーム」をしているのかを理解しその上で戦略の妥当性を慎重に見極める姿勢が求められる。
主な論点:
◆ チェスに見る評価の限界
- チェスマスターでも、ある一手が「天才的」か「愚か」かを、その後の展開を見なければ判断できない。
- ビジネスはチェスよりも遥かに多くの不確実性や偶然性が絡むため、リーダーの行動評価は一層困難である。
◆ リーダー評価における誤認の実例
- スティーブ・ジョブズの復帰前後の評価の変化
- 金融危機直前まで賞賛されていたウォール街幹部たち
- ITバブル時代に一時的に評価を落としたウォーレン・バフェット
- 評価が分かれるイーロン・マスクの例 → これらは、結果が出た「後」でしか評価が定まらない不確実性の証左である。
◆ 経営判断の評価には「ゲームの種類」理解が不可欠
- チェスと同様に、ビジネスにも「短期決戦型」「中期狙い」「長期保有型」など、異なる「ゲームの種類」が存在する。
- 投資家のタイプ(ヘッジファンド、PEファンド、VC、長期保有型投資家)により、求める成果や時間軸が大きく異なる。
- よって、同じ戦略でも、評価する投資家の性質次第で「賢明」とも「愚か」ともされる。
◆ 本質的な示唆
- リーダーの戦略は、その人の能力や知見だけでなく、運や環境、投資家の期待という変数に左右される。
- ゆえに、評価者は コンテキスト(背景・前提)を理解し、どの「ゲーム」をプレーしているのかを見極める必要がある。
- 一見の成果や短期の判断でリーダーを評価するのではなく、その意思決定のロジックや前提条件、目標との整合性を精査すべきである。
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“Can You Tell a Genius Strategy from a Huge Mistake?” HBR.org, February 19, 2025.