リモートワークの普及に伴い、多くの企業が従業員の働きぶりを把握するために監視技術を導入している。現在、約80%の企業がこうしたモニタリングツールを使用しているが、これらは従業員のプライバシーや心理的安全性に影響を及ぼし生産性向上への効果には疑問もある。
モニタリングの有無よりも、その「やり方」が従業員の行動や組織パフォーマンスに大きく影響する。単なる監視ではなく、信頼と対話に基づくマネジメントこそがリモートワーク時代の生産性向上に不可欠である。
■ 2種類のモニタリング手法とその影響
筆者らは米英のリモートワーカー1100人以上を対象に調査を行い、モニタリングの手法が従業員の態度や行動にどのような影響を与えるかを分析した。その結果、モニタリングには大きく分けて以下の2種類があることが明らかになった。
① 観察型モニタリング(Observational Monitoring)
- 特徴:キーストローク、マウスの動き、スクリーンショット取得、メールの監視など、テクノロジーを使って受動的にデータを収集。
- 影響:
- 従業員のプライバシー意識を刺激し、信頼を損なう。
- アイデアの共有や改善提案が抑制される。
- コラボレーションや創造性が低下。
- 特に複雑で創造的な業務(例:エンジニアリング、コンサルティングなど)においては悪影響が顕著。
② 交流型モニタリング(Interactive Monitoring)
- 特徴:定期的な1on1ミーティングやオンラインでの対話を通じて、直接的な関与と信頼関係の構築を重視。
- 影響:
- 従業員が意見や提案を出しやすくなり、エンゲージメントとイノベーションが促進される。
- 上司への信頼が高まり、心理的安全性が向上。
- チャレンジとしてポジティブに受け止められる。
■ モニタリングの効果は「受け取り方」と「職務の性質」に依存
- 観察型モニタリングは、従業員にとって「妨害要因(悪いストレス)」と感じられやすく、仕事への意欲を損なう可能性が高い。
- 一方で、交流型モニタリングは「チャレンジ(良いストレス)」として捉えられ、モチベーションや改善意欲を高める。
- 特に創造性が求められる職務では、観察型の悪影響がより強く出ることが示された。
■ マネジャーへの3つの提言
- データ依存から対話へ:交流型アプローチを導入する
- 定期的な1on1や「オンライン版オープンドア」など、対話の機会を増やす。
- 信頼関係を育む
- 従業員の意見を尊重し、共感を持ってフィードバックを行うことが、モニタリングの効果を高める鍵。
- 職務の性質に応じた柔軟なモニタリングを設計する
- 創造的・柔軟性の求められる職務では、観察型よりも交流型が効果的。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“Research: A Better Way to Keep Tabs on Your Remote Workforce,” HBR.org, February 12, 2025.