本論文は、多様性に関する一般的な議論や価値提案の課題を整理し、より効果的かつ実証的なアプローチを提示している。以下に要約を示す。
1. 多様性と雑音の関係
- 多様性の概念は多義的であり、多くの雑音が含まれているため誤解や抵抗が生じやすい。
- 職場における多様性の意義をリーダーに問うと曖昧な回答が多く、信号(明確な価値)より雑音が目立つ。
2. 一般的な多様性の価値提案
- 売上向上の効果
- 信号:「多様性により多様な顧客層に対応できる。」
- 雑音:多様な従業員が単にマーケティング要素と見なされる恐れがある。
- 社会的な被害の修復
- 信号:「多様性は過去の排除を是正し、公平性を促進する。」
- 雑音:利他的な投資と見られ、特定のグループのみが利益を得る印象を与える。
- 多様性と経営層の成功の相関
- 信号:「多様な経営層は収益性向上に寄与する。」
- 雑音:因果関係の証明が不十分で、形式的な多様性の推進に留まる懸念がある。
3. より良い価値提案:複雑性としての多様性
- 多様性を「複雑性」(complexity)として再定義し、先天的・後天的特徴の総合的理解を重視。
- 先天的特徴:性別、出身地、母語など変えられない要素。
- 後天的特徴:経験、技能、生活状況など変化しうる要素。
4. 複雑性と高パフォーマンスの関連
- 複雑性(多様性)が生む摩擦は、イノベーションの鍵となる。
- 多様な視点が問題解決の新たな可能性を開く。
- 一方で、同質なチームは摩擦が少なく、集団思考に陥りやすい。
- 摩擦を生産的に活用することで、高い業績や革新性を実現可能。
5. 結論
- 多様性を単なる「道徳的正当性」や「収益向上の手段」としてではなく、チームの複雑性を高める要因として捉えるべき。
- 複雑性の高いチームは一貫して高い成果を出すことが実証されており、この視点で多様性を推進することが有益である。
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“Reframe the Value Proposition of Diversity,” HBR.org, November 19, 2024.