現代社会では、短時間で多くの成果を上げることが求められ、働く人々は疲れ果てている。調査によると、多くの労働者が仕事のプレッシャーを感じる一方で、長時間労働を成功の条件と考えている。この状況は「急ぎ病 (hurry sickness)」と呼ばれ、1974年に心臓専門医が提唱した概念であり、慢性的な焦りやストレスが心身に悪影響を与える。
本論文は、働き方を見直し持続可能な生産性を実現するための意識改革を促している。
急ぎ病の危険性
急ぎ病は高血圧、不眠、免疫力低下、創造力の低下、意思決定ミス、人間関係の悪化、さらには燃え尽き症候群につながる。また、ストレスは死亡リスクを高めることが研究で示されている。
急ぎ病の兆候
・すべてが緊急に感じる
・常に急ぎ、複数のタスクを並行処理
・時間に追われ、休憩を取らない
・効率性を優先し、自分の健康や人間関係を犠牲にする
・生産性を自己価値と結びつける
克服方法
急ぎ病を防ぐには、タスクの優先順位を明確にし休息を取る習慣を持つことが重要。また、完璧主義を抑えて適度なペースで働くことが健康と成果の両立につながる。
1. 強制力のある仕組みを取り入れる
タスクの急ぎすぎを防ぐため意識的な仕組みを作ることが重要。例えば、バッファタイムを確保し深く集中できる時間を設ける。また、ToDoリストの見直しを習慣化しすべてのタスクを同じ緊急度で扱わないようにする。
2. 引き受ける前に一呼吸おく
依頼を引き受ける前にスケジュールの確認だけでなく本当に対応すべきかを慎重に検討する。仕事の目的や価値観に合致しているか、リソースを過剰に消費しないかを考える。場合によっては信頼できる人の意見を聞くのも有効。
3. イエスと言った場合に考えられる結果を書き出す
依頼を受けた際の影響を可視化することで衝動的な判断を防ぐ。手書きでリスクや負担を整理し、タスクが生活や精神的負担にどう影響するかを見極めることで意思決定の質を高める。
4. ペースを落とすことのメリットを書き出す
意識的にペースを落とすことで得られる利点をリストアップする。例えば、睡眠の質向上、人間関係の充実、リラックス時間の確保などを明確にすることで急ぐことの弊害に気づきやすくなる。
5. 優先順位を決めるツールを活用する
すべてのタスクを最優先にしないために、4Dメソッド(実行、延期、委託、削除)を活用する。ToDoリストの追加時には、不要なタスクを削除するルールを設けることでタスクの取捨選択を促進する。
6. 達成より寛容を重んじる
成果に執着しすぎるとストレスが増すため、自分に寛容になることを意識する。達成したことを可視化しネガティブな自己批判を「友人に同じことを言うか?」と問い直すことで自己肯定感を高める。
7. マインドフルネスを実践する
深呼吸や瞑想、日常の作業に意識を集中することでストレス軽減や心の安定を図る。習慣化することで急ぎすぎる思考や行動を抑え、バランスの取れた生活を送る力を養う。
8. サポートを求める
急ぎ病が深刻な場合は、セラピストやエグゼクティブコーチ、支援グループの助けを借りる。アカウンタビリティパートナーを活用することで、継続的に健康的な習慣を維持できる。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“The Insidious Effects of Hurrying,” HBR.org, January 13, 2025.