従業員の「昇進のタイミング」が、その後の離職率(リテンション)に大きく影響することが大規模な実証研究と実験によって明らかになった。特に、労働市場が企業に有利な時期に昇進させた従業員は、その後市場が求職者に有利になっても離職しにくくなる傾向がある。
企業が将来の労働市場の変動に備えるには、**昇進の質だけでなく「いつ昇進させるか」**というタイミングが鍵になる。早めの戦略的な昇進が、従業員の長期的なリテンションと企業競争力の維持に直結する。
研究の背景と目的
- 2020年のコロナ禍により雇用は冷え込み、企業有利の労働市場に。
- その後、経済回復とともに「大退職」現象が発生し労働者有利にシフト。
- この変化の中で、企業はどのように従業員を引き留められるか?を探った。
主な調査と結果
実証研究(レストランチェーンのデータ分析)
- 対象:2018〜2023年のマネジャー11,000人超の離職データ。
- 結果:
- パンデミック以降、全体的に離職率は上昇。
- しかし、内部昇進者は外部採用者に比べて47%以上離職しにくい。
- 昇進者と外部採用者は、元のスキルや実績に差がなかったため、差は昇進経験の有無によるものと判断。
実験(仮想シナリオ)
- 対象:米国の成人労働者300人。
- 設計:昇進者と外部採用者に分け、①雇用危機、②雇用好況のシナリオを提示。
- 結果:昇進者は職の安定感と組織への信頼感が高く、好況期でも転職意欲が低かった。
理論的視点:「エンプロイアビリティ・パラドックス」
- 昇進はスキルと市場価値を高めるが、同時に転職の魅力も高まるという逆説。
- 但し、本研究ではタイミング次第でこの逆説を回避できることが示された。
リーダー・人事への提言
- ポジションは昇進で埋めることを優先
- 昇進はロイヤルティや業績向上に貢献し、外部採用よりも長期的に有利。
- 「企業有利な市場の時」に昇進させる
- 従業員にとって不安な時期に昇進させると、会社への感謝と信頼が高まる。
- 長期的視野でのタレントマネジメント
- 短期の市場動向に流されず、一貫した育成と昇進戦略が重要。
- 「エンプロイアビリティ・パラドックス」を軽視しない
- 昇進者は流出しやすいが、タイミングとフォロー次第でリスクを抑えられる。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“Research: To Retain Employees, Promote Them Before the Job Market Heats Up,” February 20, 2025.