米国はイノベーションの分野で世界をリードしているが都市のスマート化では後れを取っている。世界のスマートシティランキングでは米国の都市がトップ30に入っておらず、トップ50にもわずか3都市(ニューヨーク、ボストン、ワシントンDC)のみがランクインしている。
この遅れの主な要因として、地方自治体のリーダーが指摘する課題は以下の3点である:
- 硬直化した官僚機構(83%が指摘)
- 部署間の縦割りが自己変革を阻害している。
- 煩雑な規制(44%が指摘)
- 膨大なルールが都市の柔軟な対応を妨げ、スタートアップ企業との協働を困難にしている。
- リスク回避の傾向(31%が指摘)
- 新技術導入に対する恐怖が強く、市長たちはAIの有用性を認識しつつも導入に消極的である。
この結果、米国全体としてはイノベーションが進んでいるものの、地方自治体の行政は停滞している。
AIが都市に提供する3つの価値
都市のAI活用は以下の3つの領域に分けられる:
- 業務の自動化(76%が回答)
- 行政手続きの迅速化やコスト削減が可能。
- 例:ホノルルではAI導入により住宅建設許可の発行期間を70%削減。
- 許可申請のプロセス短縮(例:ロサンゼルス、サンフランシスコ)
- 市職員の業務負担を軽減し、より重要な業務に集中できる環境を整備
- 意思決定の質の向上(41%が回答)
- センサーやカメラで収集した膨大なデータをAIが処理し、都市運営の最適化を支援。
- 例:交通機関の最適化(信号制御、渋滞予測、有料道路の動的価格設定)
- インフラメンテナンスの効率化(センサーによる異常検知)
- エネルギー管理の最適化(電力消費のリアルタイム監視)
- 地域コミュニティとの関わり強化(23%が回答)
- AIを活用して住民サービスを改善し、市民参加を促進。
- 例:AIチャットボット:役所への問い合わせの90%に対応(ノースカロライナ)。市民の書類記入サポート(十数以上の都市)。
- AI翻訳会社アンバベル:20を超す言語でメールやウェブの翻訳サービスを提供。正確性チェック含めチャット1件0.02ドル。
今後の展望
AIの活用が進めば、都市のオペレーションの効率向上、市民サービスの充実、意思決定の精度向上が期待される。しかし、規制改革やリーダーの意識改革も必要であり、これらの障壁を乗り越えることが米国の地方自治体のスマート化を加速させる鍵となる。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“How U.S. Cities Are Using AI to Solve Common Problems,” HBR.org, December 03, 2024.