近年のパンデミック、戦争、社会不安、物価上昇などの大規模な出来事は、職場における従業員の主体性に大きな影響を与えている。このような状況下で、従業員は「自分にはどうにもできない」という無力感を抱きやすくなっている。
職場における無力感は従業員の同類志向を強め、多様性やイノベーションを阻害する可能性がある。しかし、リーダーが心理的安全性の確保、予測可能なルーチンの導入、部門横断的なチームの推奨などの対策を講じることで、より多様性に富み、創造性の高い職場環境を実現できる。
研究の主な発見
- 無力感と同類志向の関係
60カ国・9万人を対象とした研究や大学生・正社員を対象とした実験により、無力感を抱くと人は自分と似た人(人種、宗教、社会経済階級、性格など)に引き寄せられる傾向があることが判明した。これは多様な視点に触れる機会を減少させ、職場のイノベーションやコラボレーションを阻害する可能性がある。 - 職場環境への影響
無力感を感じる従業員は、同じ価値観を持つ同僚と仕事をしたがり、学歴や職歴が似ている人を好む。また、彼らは多様なチームを作る意欲が低く、より均質なグループ内で助言を求める傾向がある。これは、職場のインクルージョンや創造性を低下させる要因となる。 - 無力感と秩序への欲求
無力感を抱くと人は予測可能性や秩序を求めるようになり、その一環として同類志向が強まる。これは自己の世界観を強化し、安心感を得るための行動と考えられる。
無力感による同類志向を是正する方法
- 心理的安全性を高める
- オープンな対話を奨励し、多様な意見を尊重する文化を醸成する。
- ミーティングで全員が発言できる機会を設け、異なる視点の重要性を強調する。
- 予測可能なルーチンを設ける
- 明確なスケジュールを設定し職場の不透明感を減らすことで、同類志向の必要性を低下させる。
- 部門横断的なチームを奨励する
- さまざまなバックグラウンドを持つ人々が協力する環境を整え、均質なグループの形成を防ぐ。
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“Research: Why Forming Diverse Teams Is Harder in Uncertain Times,” HBR.org, December 20, 2024.