日経ビジネス 2025.3.10号:続・管理職罰ゲーム 「なりたくない」77%の攻略法

過去2度(2023年10月・2024年2月)の日経ビジネスにおいて「管理職 罰ゲーム」と題した特集記事が掲載された。同誌の昇進に関する意識調査によると「管理職になりたくない」と考える社員は前年比5ポイント増、働き方改革やコンプライアンス強化の中で業務が増え、責任が重くなる状況を目の当たりにした一般社員は益々管理職への昇進を敬遠するようになっている。

この難局を打開する取り組む10社の実例を3編の記事にて紹介している。

正社員361人に再び独自アンケート 管理職敬遠、深刻化 手本なき不安が重しに

概要
独自アンケートを実施し管理職を敬遠する理由を分析。責任の重さだけでなく、ロールモデルの不在や昇進後の変化に対する不安が管理職志向を阻害している実態を明らかにしている。

管理職への意欲を高めるには、負担を軽減し昇進の魅力を伝えることが不可欠。特にロールモデルの存在が昇進意欲に大きな影響を与えるため、企業は管理職の育成と支援を強化するべきである。

主なポイント

  1. 管理職敬遠の増加
    • 「管理職になりたくない」割合は2018年の72.8%から77.3%に上昇。
    • 負担増、責任増に加え、創造的業務ができないという不満が強い。
  2. ロールモデルの不在が昇進意欲を低下
    • 影響力のある上司がいると昇進意欲が高まるが、リーダーシップを発揮する管理職が減少。
    • 日本企業の強みとされた「ミドルアップダウン(中間管理職が経営と現場をつなぐ役割)」が機能していない。
  3. 昇進への不安要因
    • 周囲との関係性の変化を懸念し、昇進を敬遠する傾向。
    • 業務量の多い管理職ほど、部下の昇進意欲を低下させる。
    • 経営層がビジョンを示すことで、昇進への不安を和らげることが可能。
  4. 管理職を魅力的にするための施策
    • 「管理職になってよかった」と感じる人が多いことを積極的に発信する。
    • 企業は管理職の役割を見直し、リーダーとしての業務に集中できる環境を作るべき。
    • 柔軟な働き方を取り入れ、管理職の負担を軽減することが必要。

「上に立つ意欲」引き出す3社 昇進の魅力を演出 潜在力を掘り起こせ

概要
多くの若手社員が昇進を敬遠する中、企業が昇進の魅力を高めリーダー候補者を育成する取り組みを紹介。昇進を「ご褒美」として演出し潜在的な管理職候補を引き出すための施策を解説している。

昇進を魅力的なキャリアの選択肢とするためには、組織全体での支援、管理職の役割の明確化、長期的な育成プログラムの導入が重要である。

主なポイント

  1. 積水ハウス
    • 「ウィメンズカレッジ」を設立し、女性管理職候補を育成。
    • 課題解決の実践型プログラムを通じて管理職のスキルを学び、管理職のモチベーションを向上。
    • 「幸せ度」調査では女性管理職の満足度が高く、昇進への意欲向上に寄与。
  2. 大塚商会
    • 営業支援システム「SPR」を活用し、営業管理を効率化。
    • 「AIハピネス」により、社員の幸福度を測定し、管理職のマネジメントに活用。
    • 研修プログラム「大塚マネジメントカレッジ」を設置し、長期的な管理職育成を実施。
  3. NEC
    • ジョブ型人材マネジメント制度を導入し、適材適所の人事を実現。
    • 27歳で部長級に昇進するなど、成果重視の人事制度を採用。
    • 「Top of Top(トップ・オブ・トップ)タレント」プログラムで経営幹部候補を育成。
  4. サイボウズ
    • 一度廃止した管理職制度を復活させ、組織の最適化を進める。
    • 開発部門では「開発担当」と「人材マネジメント担当」に分業し、管理職の負担軽減を図る。

教育研修、適材適所、抜てき 上昇志向に点火する3つの攻略法

概要
管理職の負担増や意識の変化に対応し、企業が従業員の昇進意欲を高めるための3つの戦略(教育研修、適材適所、抜てき)を紹介。先進企業の具体的な取り組みを取り上げ、管理職登用の新たな仕組みを解説している。

管理職を「罰ゲーム」ではなく、キャリア形成の魅力的なステップにするためには、従業員が納得できる育成、適材適所の配置、公平な抜てき制度が不可欠である。

主なポイント

  1. 教育研修(日本たばこ産業・三井化学)
    • JTの「ネクスト・リーダーズ・プログラム(NLP)」では、選抜された社員が5年間の研修やメンター制度を受け、個人の課題に応じたスキル向上を図る。
    • 三井化学では管理職向けに「リーダーシップ・デベロップメント・プログラム(LDP)」を実施し、実践とフィードバックを重視した研修を行う。
  2. 適材適所(テルモ・日揮グローバル)
    • テルモは職務記述書(JD)を導入し、管理職ポストを公募制にすることで公平性を確保し、若手の登用を促進。
    • 日揮グローバルは部長職を3つの役割(部長・PCM・CDM)に分割し、マネジメントの負担軽減と人材育成を強化。
  3. 抜てき(ジャパネット・オムロン)
    • ジャパネットでは「代理」制度を活用し、管理職候補者に徐々に責任を与える仕組みを導入。
    • オムロンは最短28歳で管理職になれる制度を設け、挑戦を奨励する。さらに「リチャージ・リチャレンジ制度」により、適性が合わなかった管理職の再挑戦を可能にしている。

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